不動産の売買は、売買当事者間で直接取引が行われる相対取引ですから、双方の合意があればそれが取引価格となります。しかし、取引の内容によっては情報の不均衡等から必ずしも市場適正価格により取引されているケースばかりとは言い切れません。また、土地については行政的な要因により建築できる建物の規模・形状等が異なってきます。つまり、行政上の都市計画や地区計画の制定・改廃等により土地価格は変わってくるのです。 例えば、わかりやすい例では都市計画道路の区域内に指定されているケースであれば、価格がプラスになる要因としては容積率緩和等により建築物の規模の拡大が図れること等、逆にマイナス要素としては、敷地が道路として使用されることによる減価等が考えられます。 このようなことを売買当事者、双方とも理解している上での取引であればよいのですが、不動産取引や建物建築等は様々な法規制により行われていることから、知らずに損をしてしまうケース等が考えられます。もちろん、取引に際しては、重要事項としての説明義務があったり、錯誤・担保責任等の訴えができる可能性はありますが、費用や期間的な逸失利益を考えると留意する必要があります。 ところで、会社の設立や株式の発行に当たり、金銭以外の財産を出資することを現物出資といいますが、不動産そのもので出資するケース等があります。その際、役員や同族会社等の間で市場価格と乖離している額で、取引が行われることがあります。これについて、明らかに譲渡と認められるケース等については税務署の調査対象とされることがあります。そのため、不動産による現物出資の場合、不動産鑑定士の鑑定評価を受けた上で、その価格が相当であることについて、弁護士、税理士等の証明を得た場合には調査対象の例外となります。 また、不動産を交換した場合には、時価で売却したものとして課税されます。ただし、法人の場合は圧縮記帳(損金算入によリ課税を繰り延べる経理)が認められており、個人の場合は「交換の特例」により譲渡がなかったものとされ、取得資産を譲渡する時まで課税が繰り延べられます。 交換の特例には条件があり、●1年以上保有している固定資産であり、交換目的により取得していないこと●同種同等の資産の交換であること●交換する資産の時価の差額が、高い方の20%以内であるか、20%を超えた場合でも差額の授受がないこと●取得した資産を同一の用途に供することという条件を満たしている必要があります。不動産の交換をお考えの方は、事前に鑑定評価書を取り、交換の特例が受けられるかを確認しておくとよいでしょう。
