不動産鑑定評価とは(旧ホームページより転載)

不動産鑑定評価とは「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき、1964年に制定された「不動産鑑定評価基準」を拠り所として、不動産鑑定士が行う鑑定評価のことです。少し言い回しが堅いのですが、「不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することであり、この社会における一連の価格秩序の中で、その不動産の価格及び賃料がどのような所に位するかを指摘することである。」と規定されております。つまり、簡単に言ってしまえば、不動産の価格を判断することです。不動産の価格を判断するをいうと一見、誰にでもできそうと思われるかもしれません。確かに宅建業者さんなどは、地元の不動産市場には精通しており、その土地での相場観を把握していることから不動産の価格水準を判断することは可能でしょう。しかしながら、不動産は位置、形状、規模などの要因(価格形成要因)によって価格は変わるものです。更に、売買などにおいて売手と買手では主観的要素が異なることから、これを第三者的な客観的評価を行うのはとても難しいことなのです。今の例で言えば、売主は「高く」売りたい訳ですから高い理由を主張し、高額の評価をしたいものでしょう。逆に、買主は「安く」買いたい訳ですから安くなる理由を主張し、減額を求めるでしょう。このように、その不動産に関わる人の立場やスタンスにより希望価格は容易に変わってしまうものなのです。さらに言えば、不動産は時の経過の中で常に価格が変化していくもので、景気の良い時は価格(賃料)は上昇していく傾向にあり、その逆も起こります。また、上述した不動産を主体とした要因の他に、市場当事者の事情による理由によっても価格は変わります。例えば、系列企業間での取引、競売・公売などにおいては、一般の市場で成立する価格帯から乖離するケースがあります。このように、不動産の価格は、需給バランス・市場参加者の属性・時の経過・取引の状況・対象の環境等、様々な要因の相互作用によリ形成されいるものであり、その価格を恣意性を介入させることなく、誰の立場から見ても妥当と思われる価格を提示するためには、価格を表示した判断基準が必要となり主観的なものであってはならないのです。では、どのようにしたら客観的に公平妥当と認められる評価ができるのでしょうか?そのためには、先に述べたような一つ一つの要因について、立場に偏ることのない判断基準が必要となります。それが初めに述べた「不動産鑑定評価基準」です。ところで、市場が成立しているものについての価格は、需給のバランスによリ成立しますが、その需給バランスは価格の三面性によリ成立しています。つまり、費用性・市場性・収益性の三者の相互作用によリ価格は形成されるのです。どのようなことかというと、市場参加者は取引に当っては、新たに作る場合にかかるコスト、市場での取引水準、投下資本に対しての収益性を考えて取引の判断基準としているのです。そこで、鑑定評価においては客観的な判断を行う必要性から、様々な要因について具体的な数値として置き換えます。そして、その数値を費用性・市場性・収益性それぞれからアプローチした手法の計算過程おいて使用することで、同じ基準で偏ることのない価格判断を行っているのです。このように、複数の手法を採用し、対象不動産に係る要因について数値化することで初めて、市場の実態に則し、公平で説得力のある価格が提示できるのです。そのため、不動産鑑定士の発行した「不動産鑑定評価書」は、賃料交渉等の裁判上の証拠資料、相続・財産分与等の税務上の証明資料として公的に認められた正式な文書なのです。

2019年05月12日